『目と身体の協応』とは、目で見た情報を元にどう身体を動かすか？という、まさに入力系➡情報処理➡出力系の流れの根幹となる部分です。

スポーツにおいて、ほとんど全てのプレーが目と身体の協応であると言えます。
ボールをよく見て、自分のプレーエリアや打点に、あとどのくらいでボールが到達するかを予測する。

そして、ボールが自分のプレーエリア・打点に到達した時に、ボールはどの位置でどの高さにあるか？それを予測する。

そして、そこから逆算して、いつどのタイミングでどの位置にバットやラケットを振れば、ボールをしっかりミートすることが出来るか？いつどこに手やグローブを出せば、ボールがキャッチ出来るか？全てがボールをよく見て予測し、そこに正確に身体を動かす。その連続が球技であり、スポーツなのです。

　　

ほとんど全てのプレーが目と身体の協応であるのなら、その目と身体の協応を高めるトレーニングは必要であり、有用であると考えられます。スポーツが苦手な人は、これが苦手であるということなので、これを克服できるようにトレーニングをしていく必要があるのです。

スポーツが得意な人は、普段の練習や日常生活の中でそういう能力を自然に身に付けられた人であり、その人がさらにスポーツビジョントレーニングを行えば、より高度なスポーツビジョンを獲得し、競技力を向上させる可能性を高めることが出来るはずです。

1つ具体的なスポーツビジョントレーニングを紹介すると、ナンバータッチトレーニングというものがあります。目の前に置かれたナンバープレートを順番にタッチしていくというものですが、そこに色の要素を加えます。数字を赤・青・黄など、様々な色で記したプレートを用い、指示された色の番号のプレートを触っていきます。

少し専門的な話になりますが、視界の中心部分を司る網膜の中心部には、錐体細胞という視細胞が多く分布しています。一方、周辺視野を司る網膜の周辺部には杆体細胞という視細胞が多く分布しています。この2つの視細胞、さまざまに役割分担をしているのですが、色を識別する役割は錐体細胞が担っており、杆体細胞には色を感じる能力がありません。つまり、杆体細胞による周辺視野には、色能がないのです。

　　

いやいや、そんなはずはない。「私は周辺視野で見た物にも色が付いて見えているよ」と思う人が多いと思います。その通りです、人間は周辺視野で見た物にも色が付いて見えます。しかしそれは、脳が情報処理をする過程で、記憶や物の連続性などから推測して補正をかけ、色付けをして見せているからです。一度試してみてください、初めて見る物を周辺視野だけで見た場合、人はその物の色を識別することはできません。

そこで、周辺視野で見た物の色を判別するためには、眼球運動をして中心視をしなくてはいけません。

色の要素を加えたナンバータッチトレーニングは、

周辺視野で数字を読み取る➡素早い眼球運動で中心視する➡色を識別する➡正しい色であれば、手や足で触る

このように、入力系➡情報処理➡出力系の一連をなした、高度なトレーニングです。

これを、スピードを速くしたり、プレートを小さくしたりすることで、目で見た位置に正確に手や足を出す精度を高めていくのです。

さらに、聴覚や記憶の要素も加えたり、バランスディスクを使ってボディバランスや体幹の要素を加えることで、より目と身体との協応を強く刺激することが出来ます。

Back　　　Next