ドリブルは、主に次の2種類に分けることが出来ます。
①1対1などの局面で、相手を抜いて突破するための『仕掛けのドリブル』
②スペースが空いている時にボールを持ち運ぶ、『運びのドリブル』
この2つのドリブルで、それぞれどう目を使い、何を見なければいけないでしょうか?
まず①の仕掛けのドリブル、ここでの目の有効な使い方は、主に視線によるフェイントです。仕掛ける瞬間に、進行方向とは異なる方向、かつリアリティがある方向に視線を向けておくだけでも、相手の反応を一瞬遅らせることが可能です。『リアリティがある方向』というのがポイントです。いくら進行方向とは逆の方向を見ていても、それがゴールラインやタッチラインだったのではリアリティが無く、相手を騙すことは出来ません。本当にそっちに進みそうだと思わせる方向、本当にそっちに味方がいてパスを出せそうだと思わせる方向、をチラッと見るのが重要です。
また、仕掛ける時に何を見なければいけないか? それは対峙している相手です。相手を抜くために入力しなければいけない情報は、対峙している相手の情報です。位置・距離・体の向き・ボディバランス・動き・目線などの情報を脳に入力し、情報処理をして、相手の逆を突いたり、相手の足が届かない範囲にボールを動かして突破するのです。これらの細かい情報を入力するためには、周辺視の能力が必要になります。相手の体の重心である腰あたりを見て、周辺視野で相手の体全体を捉えるようにすると良いでしょう。相手の足元やボールばかりを見ていては、有益な情報を多く入力することは出来ません。
次に②の運びのドリブル、ボールを運ぶ場合は、極力 ルックアップした状態でドリブルをするのが望ましいです。ルックアップして、眼球運動・周辺視・瞬間視・バードアイなどを用いながら、相手・味方・ゴール・スペースを探し、パスコースやシュートコース、ドリブルコースなどを見付けていくのです。
ボールは周辺視と瞬間視を組み合わせて見ます。瞬間視で見るためには眼球運動も必要です。ボールばかりを見てドリブルしていたのでは、何も出来ずにたちまち相手に囲まれてボールを奪われてしまうでしょう。
赤矢印:視線の向き
ルックアップして視線は前方に保ったまま、周辺視でボールを見ています。
赤矢印:視線の向き 青矢印:顔の向き
ルックアップして顔の向きは前方に保ったまま、眼球運動で下方視し、瞬間視でボールを見ています。
究極のドリブラーは誰か?と聞かれたら、おそらくリオネル・メッシの名前を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
メッシがなぜボールを取られないか? なぜ複数人の相手と対峙しても、スルスルっと突破できてしまうのか?
もちろん、テクニックやスピード、ボディバランスや体の強さなどを持っているからではあるのですが、それらを十分に発揮させるには、優れた入力系が必要です。敵がどこにいるか?距離は?体の向きは?目線は?姿勢は?ボディバランスは?味方がどこにいるか?スペースがどこにあるか?ゴールがどこにあるか?などといった情報をいかに早く、いかにたくさん入力できるか。その入力された情報が脳で処理されて、どう動けば良いか計算される。その計算された情報が身体に出力されて、実際に身体が動く。
メッシはこの入力系から出力系までの一連の流れの質が恐ろしく高くて速いので、身体がほぼ自動的に動き、質の高いドリブル、質の高いプレーが出来るのだと思われます。
つまり、質の高いドリブルをするためには、まずはいかに多くの情報を入力できるかがポイントになります。
いかに多くの情報を入力できるか?そのためには、いかにルックアップをしたままでドリブルが出来るか?
言い換えると、いかに周辺視と瞬間視だけでボールを見てドリブルできるか?ということが重要になります。
このセクションでは、ルックアップしたままでドリブルをして、いかに周りの情報を集められるか?
また、周辺視と瞬間視だけでボールを見た状態で、より速く、より正確にドリブル出来るようになるための技術的なトレーニングも行っていきます。