このセッションでは、9方向の滑動性眼球運動・衝動性眼球運動、輻輳運動・開散運動などの眼球運動を、より正確に、より速く出来るようにするためのトレーニングを行っていきます。また、その強度の高い眼球運動によって引き起こされる目が回るような感覚、その感覚への適応を促し、負荷なく行えるようにするためのトレーニングを行います。

眼球運動にはいくつかの種類があります。
一定のスピードで滑らかに動き、主に動いている物を追視する場合に使う滑動性眼球運動。瞬間的に速いスピードで動き、視線を移動させる時などに使う衝動性眼球運動。さらに、近くを見る時に目を寄せる輻輳運動。目が寄った状態から元に戻す開散運動などがあります。



これらの眼球運動をするための筋肉は6本あり、このような形で眼球に付着しています。これらを外眼筋と言います。眼球の外に付いているので外眼筋です。

水平方向の動きを司るのが内直筋外直筋、垂直方向の動きを司るのが上下の直筋と斜筋です。
内直筋が内転、外直筋が外転、上直筋と下斜筋が上転、下直筋と上斜筋が下転を行います。

ここで少し疑問がわきませんか? なんで斜筋は上下が逆なんだろう? 書き間違えかな?
違います(笑) この2本の斜筋、眼球に対して斜めに付着しているので斜筋と言うのですが、その筋肉の走行が他の筋肉とは違って独特なのです。

まず下斜筋、他の筋肉は総腱輪と呼ばれる眼球の後ろにある腱から始まって眼球に付着します。しかし、下斜筋だけは、眼球より前方の目頭のあたりの骨から始まって眼球下部に付着します。そのため、筋肉が収縮すると眼球の下側が前方に引っ張られるため、上転するわけです。

一方 上斜筋は、上図のように滑車状の構造になっています。滑車を通って向きを変え、眼球の後方に向かって眼球上部に付着するため、収縮すると下転が起こるわけです。

また、それぞれの筋肉を司る神経にも違いがあります。

このように、内直筋・上直筋・下直筋・下斜筋の4つは動眼神経支配、外直筋は外転神経支配、上斜筋は滑車神経支配となっており、6本の筋肉がそれぞれの神経支配のもとバランス良く動くことによって、360°あらゆる方向にスムーズに目を動かすことができるのです。

逆に言うと、この6本の筋肉のバランスが悪かったり、働きの弱い筋肉や神経があったりすると、目をスムーズに動かすことが出来ないのです。

しかし、外眼筋はあくまで筋肉なので、鍛えることが出来ます。

この6本の外眼筋を鍛えてバランスを整えてあげると、眼球運動が良くなる→目の向きが良くなる→顔の向きが良くなる→姿勢が良くなる→ボディバランスが良くなり、プレーにもキレが増す、というポジティブな連鎖が期待できます。

また、ボレーやヘディングなどをする時は上を見上げるので、主に上直筋下斜筋を使ってプレーします。

逆に、ドリブルをする時やグラウンダーのボールでは下を向くので、主に下直筋上斜筋を使ってプレーをします。

look up して周りを見る時などには、主に水平方向の外直筋内直筋を使います。

このように、プレーによってそれぞれ使う目の筋肉が異なるため、方向によって得意・不得意が生まれます。

つまり、弱い筋肉の方向への眼球運動は苦手になり、その方向のプレーも苦手になる、ということです。

なので、弱い筋肉を鍛えて眼球運動のバランスを良くしてあげると、苦手であったプレーが上手くなる可能性がある、ということになります。

特に、斜視大きな斜位、先天性の上斜筋麻痺下斜筋過動などの眼位異常があると、眼球運動は苦手になります。実際に病院で検査をしていると、滑動性眼球運動が苦手でスムーズに目を動かす事が出来ない人や、衝動性眼球運動が苦手でオーバーシュート(視線を移す時に目標物を通り過ぎてしまう)を起こす人は、一定数 存在します。また、大きな外斜位間欠性外斜視を持つ人も少なくありません。そういう人は輻輳運動が苦手である場合が多いです。疲れてくると目が寄らなくなる。そうすると、ボールをトラップする時に近づいてくるボールがしっかり見れない。すると、トラップミスをしてしまう、という事につながります。

どんなに練習をしても、なかなか上達しない。普段はミスをしないのに、試合の終盤になるとミスが増える。それらはもしかしたら、目が原因になっている場合もあるかもしれません。そうなると、サッカーの練習だけをしていても解決しない問題である可能性があるのです。

また、人間は、Head mover(ヘッドムーバー)と Eye mover(アイムーバー)という2つのタイプに分かれます。

Head Mover : 物を見る時に、目は動かさずに頭だけを動かして対象物に視線を向けるタイプ
Eye mover : 物を見る時に、頭は動かさずに目だけを動かして対象物に視線を向けるタイプ

普段は無意識にやっているので、自分がどちらのタイプか分からない人も多いかと思います。しかし、それはもったいないです。自分がどちらのタイプなのかを認識して、両方を使うことが出来るようにトレーニングをする。そうすると、最初に『首を振る』を例にした通り、目と頭を同時に動かせるようになり、より効率的に物を見ることが出来るようになります。

また、ヘッドムーバーはアイムーバーよりも損をする場合が多いです。頭が動くと、相手に動きを読まれやすくなるためです。
対峙している相手の周辺視野では、目線の動きまでは感知できなくても、頭の動きは感知できる可能性の方が高いからです。

自分の頭が動いたという情報が相手に入力されると、その分コンマ数秒、相手の対応は早くなります。そのコンマ数秒の差で、半歩分、先に足を出されてボールを奪われたり、体半分、前に入られて止められたり、足先数センチ分、先にボールに触られたり、そういう差につながっていきます。

しかし逆に、頭の動きや目線をフェイントに使うことも出来ます。

そのため、頭や目の動きを上手く使い分け、より効果的で効率的に目を使う方法を身に付けていく必要があるのです。

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